強い力を受けた私は地面へ仰向けにひっくり返る。視界を遮る影に気付いて目を開ければ、男子高校生が上から覆いかぶさっていた。
(床ドンだ!!)
ここにいるのがパンをくわえた私でなければ、きっと第三者からは少女漫画ばりのロマンチックなシチュエーションに見えたはずだ。そう、パンをくわえた私でなければ。
「いてて……やっぱ寝坊するとロクなことがないな。ごめんな、びっくりしただろ」
彼はそう言うと、私の手を引いて身体を起こした。シャツをまくった腕は日に焼けていて健康的な印象を受ける。学生鞄の代わりにスポーツバッグを肩から下げているところを見るに、運動部の生徒だろうか。
私の顔を覗き込んだ彼は、「あっ」と声を上げた。
「君、有明さんでしょ? 三年一組に転校して来た」
「そうだけど……あなたは?」
「俺、風間滉平。一度も話したことなかったけど、俺も一組なんだ」
「同じクラスだったんだね」
まだ同じクラスの男子とほとんど会話をしたことがない私にとって、風間くんは初めて知り合ったクラスメイトだった。
「にしても初対面でぶつかっちゃうとか、ほんとカッコ悪いな俺……ごめんな。怪我してない?」
「大丈夫だよ。ちょっと肘打ったくらいだから」
「そっか……なら良かった」
彼の笑顔は太陽のように明るく、自然と周囲をポジティブな気持ちにさせるオーラがあった。彼につられて私もつい笑顔になると、遠くからチャイムの音が聞こえてくる。
「まずい、予鈴だ! 行こう、有明さん」
「あ……」
立ち上がった風間くんは私の手を引いて走り出す。
握られた掌を振り解くこともできず、私は彼と共に高校へ向かって走った。
(床ドンだ!!)
ここにいるのがパンをくわえた私でなければ、きっと第三者からは少女漫画ばりのロマンチックなシチュエーションに見えたはずだ。そう、パンをくわえた私でなければ。
「いてて……やっぱ寝坊するとロクなことがないな。ごめんな、びっくりしただろ」
彼はそう言うと、私の手を引いて身体を起こした。シャツをまくった腕は日に焼けていて健康的な印象を受ける。学生鞄の代わりにスポーツバッグを肩から下げているところを見るに、運動部の生徒だろうか。
私の顔を覗き込んだ彼は、「あっ」と声を上げた。
「君、有明さんでしょ? 三年一組に転校して来た」
「そうだけど……あなたは?」
「俺、風間滉平。一度も話したことなかったけど、俺も一組なんだ」
「同じクラスだったんだね」
まだ同じクラスの男子とほとんど会話をしたことがない私にとって、風間くんは初めて知り合ったクラスメイトだった。
「にしても初対面でぶつかっちゃうとか、ほんとカッコ悪いな俺……ごめんな。怪我してない?」
「大丈夫だよ。ちょっと肘打ったくらいだから」
「そっか……なら良かった」
彼の笑顔は太陽のように明るく、自然と周囲をポジティブな気持ちにさせるオーラがあった。彼につられて私もつい笑顔になると、遠くからチャイムの音が聞こえてくる。
「まずい、予鈴だ! 行こう、有明さん」
「あ……」
立ち上がった風間くんは私の手を引いて走り出す。
握られた掌を振り解くこともできず、私は彼と共に高校へ向かって走った。
