(それから、この世界には『境界線』がある)

 織也くんと高校の屋上へ行った日に気付いた通り、この町の周囲にはぐるりとバリアのような『壁』が設置されていた。恐らくこれはゲーム内での主人公の行動が町内で完結することを示しており、その先は『無』――つまり、何も存在していないのだろう。

 実際町の利便性に加え、私にもたらされた生活は現実世界で一人暮らしをしていた頃とは段違いの快適さだった。寮ではヒロミさんが温かいご飯を用意して待っていて、彼女の作るメニューをお腹いっぱい食べてから自室のふかふかのベッドでぐっすり眠る。ヒロミさん曰く今年の入寮希望者は私しかいなかったそうで(恐らくこれもゲーム内の設定によるものだろう)、朝ごはんも洗濯も全て彼女が張り切って担当してくれるため私が手伝いを名乗り出る隙もなかった。
 そんな生活環境の良さから、私は専門学生時代からは考えられないほどに規則正しい生活を送っていたはずなのだがーー