「あれだろ? どうせ主人公と結ばれないと俺は幸せになれないとか考えてんだろ?」
「そ、そこまで思ってる訳ではないけど……」
「別にいいよ。主人公がお前じゃなかったとしても、最終的に結末を選ぶのは俺じゃない。それに、自分の願いくらい自分の力で叶えられなくてどうすんだっての」
「そっか……そうだよね。ごめん」

 視線を北の方向へ向けると、小高い山が目に入る。その頂上に丸みを帯びた天文台が設置されていることに気付いた時、この町では夜空の星が綺麗に見えることを思い出した。

「お前、元の世界に帰りたいんだろ? 折角この世界の時間も動き出したことだし、協力くらいはしてやるよ」
「ありがとう」
「その代わり、報酬はサンドイッチな」
「え!?」

 けらけらと笑う彼の表情を見て、強張っていた肩の力が抜ける。
 地平線に沈む夕陽に反射して、この世界をぐるりと囲む壁が、きらきらと輝いていた。