「って――えええ!?」

 戦慄する私を前に、織也くんは呑気にもぐもぐと一つ700円のサンドイッチを食べていた。

「だってきららちゃん、私と同じセーラー服着てるじゃない! 顔だってあんなにかわいいのに」
「いわゆる『男の娘』ってやつだよ。お前の周りにムサい男ばっかいんのも暑苦しいし、ああいうタイプの奴が一人くらいいた方が需要あんじゃねーの」
「需要って何!?」
「お前の需要だよ。何言ってんだ今更」
「は!?」

 脳内が再び混乱を極める。この世界の住民と私は根本的な部分で話が食い違っているようだ。カップルが互いの嗜好をきちんと理解してから結婚した方が良いように、このギャップは早いうちに埋めておかないと、後々とんでもないことになりそうな気がする。

「意味分かんないよ。どうしてクラスメイトの存在に私の好みが関わってくるわけ」
「んなもんお前が『主人公』だからに決まってんだろ」
「!」

 『主人公』。今、彼は確かにそう言った。

(てことは、やっぱりここは……)

 口をつぐむ私の顔を、「つくづく思ってたけど。お前、やっぱり変な奴だな」と織也くんが覗き込む。

「今朝だってそうだ。普通出会ってすぐに逃げる奴がいるか? 俺達初めて会ったんだぞ。お互い自己紹介くらいするだろ」
「……それは、『主人公』である私と、織也くんの関係だから?」
「そうだよ」
「……」