「ところで、海羽ちゃんはもう誰と付き合うか決めた?」
「ぶっ!?」

 にっこりと微笑むきららちゃんを前に、飲みかけていたお茶を噴き出しそうになる。

「何言ってるのきららちゃん……?」
「え? だって海羽ちゃんはそのために転校して来たんじゃないの?」

 きょとんと小首を傾げられ、背筋が凍る思いがする。

(どんなチャラ女設定!?)

 もしクラスに『有明海羽はイケメンと付き合うために蒼遥高校に転校して来た』だなんて噂がまかり通っていたら、大変な風評被害だ。

「海羽ちゃんのためになれることだったら何でも力になるよ。だから気になる男の子ができたらきららに教えて」
「ご、誤解してるよきららちゃん! 私はただーー」

 見えない力に巻き込まれて、この世界に迷い込んでしまっただけ。
 実の姿は、二十歳の会社員なのだ。

 本当のことを打ち明けようとした私の声は、背後に響き渡った女の子の歓声によって遮られてしまう。