約一週間に渡る新入社員研修の後。
待ちに待った辞令で私が人事部の男性から渡されたのは、『有明海羽様 旧アムールゲームス部の勤務を命じます』と書かれた一枚の紙きれだった。
「え?」
本社の中にある、こぢんまりとした会議室。
交付書を受け取るなり間の抜けた声を発した私を前に、人事は「それが色々あって」と困ったような笑顔で頭を掻いた。
「界隈ではちょっとニュースになったりもしたんだけど、実は有明さんが入社する二ヶ月前に、ハイクレックス、破産したゲーム会社を買収したんだよね」
「買収って……ハイクレックスは電子部品メーカーなのに、ですか?」
新入社員の癖に生意気な発言だったかと懸念するが、彼は気にする様子もなく「そうなんだよ」と深くため息をついた。
「異動になった君にだから話すけど、今回の買収は社員にとっても寝耳に水だったんだ。なんでもうちの社長がアムールゲームスのプロデューサーとかなり仲が良かったみたいで。俺も詳しいことは分からないんだけど」
「私も社名は知りませんでしたが……ゲームの会社、ってことですよね。そのアムールゲームス」
「そう。それも乙女? 向けゲーム? なんか女性に人気があるゲームを作ってたみたいだよ」
「そ、そうなんですか……」
待ちに待った辞令で私が人事部の男性から渡されたのは、『有明海羽様 旧アムールゲームス部の勤務を命じます』と書かれた一枚の紙きれだった。
「え?」
本社の中にある、こぢんまりとした会議室。
交付書を受け取るなり間の抜けた声を発した私を前に、人事は「それが色々あって」と困ったような笑顔で頭を掻いた。
「界隈ではちょっとニュースになったりもしたんだけど、実は有明さんが入社する二ヶ月前に、ハイクレックス、破産したゲーム会社を買収したんだよね」
「買収って……ハイクレックスは電子部品メーカーなのに、ですか?」
新入社員の癖に生意気な発言だったかと懸念するが、彼は気にする様子もなく「そうなんだよ」と深くため息をついた。
「異動になった君にだから話すけど、今回の買収は社員にとっても寝耳に水だったんだ。なんでもうちの社長がアムールゲームスのプロデューサーとかなり仲が良かったみたいで。俺も詳しいことは分からないんだけど」
「私も社名は知りませんでしたが……ゲームの会社、ってことですよね。そのアムールゲームス」
「そう。それも乙女? 向けゲーム? なんか女性に人気があるゲームを作ってたみたいだよ」
「そ、そうなんですか……」