「あの……聞いてどうするんですか……?」
「どうって。そりゃあ海羽ちゃんが素敵な男性と出会えるように手助けするのよ」

 最近の寮母さんは寮生の恋愛面までサポートしてくれるのか。
 何かのジョークかと思ってヒロミさんを凝視するが彼女は相変わらずにこにこしたままで、戸惑っている私の方が奇妙な人間みたいだった。

「じゃあ優しい人、ですかね……」

 当たり障りのない答えを返せば、彼女は「優しい人ね。オッケー」とウインクをして見せる。ちなみに何がオッケーなのかはさっぱり分からない。

蒼遥(あおはる)高校は良い学校よ。あなたもきっと気に入ると思う。制服は昨日のうちにアイロン掛けてクローゼットにしまっておいたから、それを着て行ってね。それじゃあ」
「え、ちょっと!」

 うろたえる私をよそに、ヒロミさんはさっさと踵を返して部屋を出て行ってしまった。

「どういうことなの……!?」

 ぽつんと室内に取り残され、仕方なく私はベッドの上から部屋を見回す。
 室内には学習机と本棚、そして壁際にはクローゼットが置かれていた。本棚の中は空っぽで、学習机の上にも高校のものと思われる教科書しか置かれていない。色合いこそ女の子らしい部屋ではあるものの、文化的で人間らしい生活を送る上ではあまりに体温の感じられない部屋だった。