流星とジュネス



 都内から新幹線で約一時間半。信州へ向かった私はターミナル駅で乗り換え、在来線に揺られていた。
 窓の外では綿をちぎったような大粒の雪がしんしんと降っている。

(静かだな……)

 周囲に乗客はおらず、暇を持て余した私は鞄からゲーム機を取り出した。

 熊谷プロデューサーが残した『エトワールの約束』のプロトタイプ。ゲームデータが途中までしか記録されていなかったこのソフトも、その後福永さんによってデバッグが施され、他の商品と同じように完全版のデータが収蔵された。
 私が元の世界へ戻ってから今日に至るまでの一年近く、身の回りで奇妙な出来事は何一つとして起こらなかった。
 あれは夢だったんじゃないの、と横江さんは冗談交じりに言う。未だにあの出来事を証明することはできず、今振り返ってみると私自身も実際に体験した出来事だと胸を張って言える自信がない。

(……でも)
 
 私は首から下がるガラスのペンダントを握りしめる。
 クリスマスの夜、織也くんと完成させた冬の大三角。
 彼の声や表情を思い出す度、胸の中が疼くような痛みに襲われる。