流星とジュネス



「かんぱーい!」

 勢いよく紙コップをぶつけた横江さんが、ごくごくとビールを豪快に飲み干して行く。
 イベント終了後、人がいなくなったパーティースペースを利用して、制作メンバーでちょっとした打ち上げを開催していた。

「やっぱり一仕事終えた後のビールは最高よね!!」

 清々しい表情の横江さんの隣で、私もオレンジジュースを片手に達成感に浸る。
 ゲームが実際に発売され、これから取り組んで行かなければならない仕事も山積みだが
、とりあえず一つの作品を完成させた祝杯は挙げても咎められはしないだろう。
 その証拠にどこで聞きつけたのか、会場には仕事を終えた社長と重役までもが集まっていた。

「イベント、好感触だったみたいだね」

 社長に話しかけられ、「はい」と亀山さんと福永さんが緊張の面持ちで答える。

「会社の倒産前後は悲しい出来事も多かったですが、最終的にリリースを喜んでくれるファンの方の顔を見ることができて良かったです」
「僕も……今回のメンバーのおかげで、諦めちゃいけないことを改めて学びました」
「力を貸してくれて本当にありがとう。ハイクレックスの社長として、改めて感謝の言葉を言わせて欲しい。その上で、どうかな。二人さえ良ければ、改めてうちの仲間として迎えることができたら嬉しく思うけど」

 社長の言葉に二人は顔を見合わせ、表情をほころばせる。

(いつか、プロデューサーがアムールゲームスに戻って来ることができたら)

 きっとアムールゲームスは、再び多くのユーザーを喜ばせるゲームを作ることができる。
 まだ見ぬ未来を想像し、私は希望に胸を膨らませた。