流星とジュネス

「乙女ゲームにおける幸せの定義には、色んな形があると思います。特定の攻略キャラクターと結ばれることは勿論、攻略したい相手を一人に決められなくてむしろ全員とエンディングを迎えたいと思っている方もいらっしゃると思いますし、もしかしたらお母さんみたいな視点で、ただキャラクターの成長を見届けることができたらそれで幸せ、みたいな方もいらっしゃるかもしれません」
「あー分かる! 今回の登場人物は高校生だから、僕なんかなおさら息子みたいに思えて来ちゃいますね。彼らが幸せになってくれれば何でもいいや~なんて」

 おどける声優さんの言葉に、再び会場が沸く。彼の言葉に頷き、私はマイクを握り直した。

「過去のゲームと比べて明確な違いが出せているかどうかは分かりません。けれどどのルートを選んでも、物語に登場する全てのキャラクターが幸せな将来を歩むことができるようなシナリオを考案させていただいたつもりです。ユーザーの皆さんには、舞台となる蒼遥高校で、自由な高校生活を楽しんでいただければ嬉しいです」

 言い終えると、客席からぱちぱち、と拍手が生まれる。
 嬉しそうに微笑む質問者の笑顔にほっと胸を撫でおろしながら、私は深々と頭を下げた。