窓の外で、ちらちらと粉雪が舞っている。

「これはエトワールのディレクターが私に決まって最初の会議で、彼が教えてくれたことなのだけれど」

 プロデューサーの眠る個室で、来客用のパイプ椅子に腰かけた亀山さんは語り出した。

「彼、中学生の頃はいじめられっ子だったんですって。運動が苦手でゲームやアニメばっかりが趣味なものだから、根暗なオタクだって、やんちゃなクラスメイト達に目を付けられてしまったみたい」
「……そうだったんですか」
「ただね、そんな彼にも、一人だけ親友がいたそうよ」
「それが写真の男の子ですか?」
「そう。星を見ることが大好きだったんですって」

 大好き『だった』。その表現に、一抹の不安が胸をよぎる。

「亀山さん。もしかして、その子ーー」

 おずおずと投げかける私の声に反応するように、亀山さんは「ええ」と視線を落とした。

「彼は中学を卒業する直前に、校外学習で川に落ちた同級生を庇って亡くなったそうよ。しかもその子は……プロデューサーをいじめていた子だったみたいで」

 恐れていた通りの返答に、息が詰まる思いがした。

「『エトワールの約束』はね、乙女ゲームであることは勿論なんだけど……実は高校生活を送ることができなかった、彼の親友への弔いでもあったのね」

 ぎゅっと唇を結んだ亀山さんの肩が、小刻みに震える。
 写真の少年を眺めていると、ジュン、と優しく懐かしい声が蘇った。