『熊谷准』。ネームプレートが貼られた個室のドアを、亀山さんがノックする。

「失礼します」

 静まり返った部屋に、白いベッドが置かれている。
 その上で、熊谷プロデューサーは静かに眠っていた。

「お久しぶりです……先輩」

 亀山さんの背後から、こわごわとプロデューサーの様子を確認する。
 初めてお目にかかる彼の顔には、至る所に縫合手術を施した跡があった。それが自殺未遂を犯した際の傷跡だと瞬間的に悟った私は、心臓がぎゅっと縮こまる感覚がする。

「今までお見舞いに行けなくて、申し訳ありませんでした」

 瞳を閉じたまま、一切の反応を示さない彼に向かって亀山さんは声をかける。
 ベッドサイドに置かれた心電図の音だけが、唯一彼が生きていることを証明していた。