「個人的に思い入れの深い作品だから、覚えてくれてる人がいて嬉しいな。あの、良かったら下のお名前を伺ってもいいですか?」
「ち、知里れすけど……」

 あわあわとする横江さんの前で、彼は小さく咳ばらいをした。

「……『知里。僕はまだ、アイドルとしては未熟かもしれない。だけどいつか必ず、君のためのアンジュになってみせるよ』」

 わずかな沈黙の後、崩れ落ちるように横江さんは地面に膝をついた。

「ミワチャン。ワタシ、キョウガメイニチデイイ」
「横江さん!?」

 太陽の光が差し込むスタジオの廊下に、私と岡平さんの明るい笑い声が響く。