流星とジュネス

 だったら、と呟いた声に反応して、二人がこちらを向いた。

「だったら、なおさら亀山さんはゲームを完成させないといけないと思います」
「え?」

 胸の奥底で揺らぐ決意の炎が強くなる。
 横江さんに小声で「海羽ちゃん?」と窘められたが、私はそのまま言葉を紡いだ。

「もし『エトワールの約束』が完成しなかったら、朋花ちゃんは永遠に高校を卒業できないんです。卒業できないどころか暗闇の中に閉じ込められて、誰とも話せず、誰とも歌えずに永遠の時を過ごすんです。そんなの悲しいと思いませんか」

 雪の中に凛と咲く椿のような、朋花ちゃんの笑顔が脳裏に浮かぶ。

(朋花ちゃんなら、絶対に諦めない)

 彼女の強い意志を回想しながら、私は頭を下げた。

「私が力になれることは、なんでもします。だから朋花ちゃんのためにも、一緒にこのゲームを完成させてくれませんか……?」
「……」
「はーい!」

 突然聞こえた無邪気な声に、驚いて顔を上げる。
 亀山さんの隣で、男の子が笑顔で手を上げていた。

「お姉ちゃんにママのこと貸してあげる。ママね、お仕事の話をしている時、とっても楽しそうなんだよ」
「こら、奏……」

 小さな息子を見つめる亀山さんの瞳が揺れる。

「……確かに、残された私がすべきこともあるのかもしれませんね」

 独り言のように小さく呟いた後、亀山さんは唇をぎゅっと結んで頷いた。