鞄から横江さんに借りていた携帯ゲーム機を取り出し、ベッドに寝転がるとSDカードをセットする。電源を付けると、穏やかな音楽と共に画面の中に満天の星空が現れた。

「綺麗……」

 普段ゲームを嗜まない人間からすると、その美しさは息を呑むほどで。
 画面を見つめながら、私は近年のゲームのクオリティの高さに感心する。
 タイトルと共に現れた『はじめから』の文字をつたないボタンの操作で選択すると、再び文字が消え、画面は満天の星空となった。

『この町では、リコリス座流星群が綺麗に見えることで有名だった』

 こちら側の操作を待たず、プロローグが白抜きの文字で夜空に表示されて行く。

『彼は言う。“流れ星に三回祈れば、願いは叶う”と』
『私はこの町で、最初で最後の高校生活を送ることになる』

「ふわぁ……」

 切り替わらない背景とスピーカーから流れるオルゴールの心地良さに、思わずあくびが漏れる。

(オープニングが終わるまで、少しだけ――)

 仕事の疲れも影響してか強い眠気を覚えた私は、ゲーム機を握ったままゆっくりと瞳を閉じた。