流星とジュネス



「アムールゲームスの買収は、私の一存で決まったようなものだった。その経緯については君も知っているかい?」

 革張りの重厚なソファに向かい合わせで座り、私は頷く。

「横江さんから伺いました。アムールゲームスの熊谷プロデューサーと仲が良かったんですよね」
「そう。彼は私が贔屓にしている小料理屋に客として来ていたんだ。一人カウンターで酔いつぶれている姿を、どうしても見過ごすことができなくてね」

 社長に言われて初めて、私は蒼遥高校の図書室で読んだプロデューサーの日記を思い出す。そう言えば彼の日記にも、二人の出会いに関する記述が残されていたはずだ。社長に読んでもらえば新たに分かることもきっとあっただろうが、こちらの世界にまで持って来れなかったことを悔やむ。

「彼は高い志を持った開発者だった。世の中に広くアンテナを張り、常日頃からユーザーが喜ぶ商品を制作しようと一生懸命でね。彼のものづくりにかける情熱は、異業種ながらに感化される部分が多かったんだ。だからこそ……」

 膝の上で指を組み、社長は悔しそうに顔を歪ませる。

「私は彼を辛い目に遭わせてしまったことを今でも悔やむよ。こんなことになるのなら、もっと早くに彼を救ってやりたかった」

 彼の悲痛な表情に胸を痛めると同時に、熊谷准と言う人物が、いかに多くの人から慕われて来たのかを改めて知る。