流星とジュネス

「そうじゃなくて、お借りしたゲーム機に『エトワールの約束』ってゲームが入れっ放しになっていたと思うんですが……」
「ああ、あのプロトタイプね」
「ソフトについて何かご存知だったんですか!?」
「いいえ。タイトルが手書きで書いてあったし、これまでリリースされた中でも覚えがない作品だったからきっと試作品なんだろうと思っただけ。でも……」

 横江さんは立ち上がり、デスクの引き出しからゲーム機を持って戻って来る。

「ほら。遊んでみようと思っても、起動しないの」

 私の隣に座った彼女は本体のパワーボタンを押す。電源が入っていることを示すランプが付いても、画面は真っ暗なままだった。

(やっぱり……)

 あの世界は、闇に呑まれてしまったのだ。
 そう考えると全身から力が抜け、私はへたりとソファに手をついた。

「ちょっと、真っ青じゃない」

 異変に気付いた横江さんが、私の肩に触れる。

「このソフトについて、何か気になることがあるの?」

 ゲーム機の電源を切り、彼女はソフトを取り出す。
 『エトワールの約束』。手書きで記されたタイトルを見つめながら、私は小さく息を吸った。