流星とジュネス

「あ……」

 瞬間、堤防が崩れた川のように、忘れていた思い出がどばっと脳内にフラッシュバックする。
 このペンダントを首にかけてくれた人のこと。
 私が十日間眠っていた理由。
 私はどこから来たのか。
 どこに行っていたのか。

「あああ……ああああ!!」
「海羽ちゃん!?」

 荒波のように押し寄せる記憶に耐え切れず、両手で頭を抱える。

「何事ですか!?」

 病室のドアが激しく開き、廊下から看護師と医師が飛び込んで来た。

「有明さん!? 大丈夫ですか!? 有明さん!」

(私は……私は……!)

 私は、帰って来てしまったのだ。
 大切なもの全てを置き去りにして、のうのうと元の世界に戻って来てしまったのだ。

(誰も救えなかった。あんなに、あんなに皆は私を愛してくれたのに)

 泣き叫ぶ私を、横江さんがきつく抱きしめる。

「大丈夫よ、海羽ちゃん」

 瞳からとめどなく溢れる涙が彼女のクリーム色のニットを濡らす。
 周囲の視線も厭わず、私は横江さんの肩に顔を埋めて泣き続けた。