その後すぐ看護師によってストレッチャーに乗せられた私は、医師の元へ連れて行かれた。話によると私は自宅のベッドの下に昏睡状態で倒れていたそうで、翌日出勤しないことを不審に思った横江さんによって発見されたのだそうだ。私は救急車で搬送、そして十日この病室で眠り続けていたのだと言う。

「身体に異変はありませんか? 気持ちが悪いとか、頭が痛いとか」
「頭痛はちょっと……でも、耐えられないほどではないです。あと、さっきベッドから降りようとした時に上手く力が入らなくて歩けませんでした」
「十日間身体を動かしていなかったので筋肉が鈍っているのでしょう。リハビリをすればまた元の生活に戻れると思います。他にも昏睡状態に陥った患者さんの特徴に記憶障害の発生なども挙げられますが、今の時点で思い当たる節などはありますか?」
「いえ、特には……」

 そう答えて、胸の中に引っかかるものを感じる。何かとてつもなく大切なことを忘れているような気がしたが、問診中に思い出すことはできなかった。