慣れないマットレスの硬さに目を覚ます。
 自分の家にしては白すぎる天井に驚き、私は慌ててベッドから起き上がった。
 同時に突き刺すような頭痛に襲われ、咄嗟にこめかみを押さえながら、辺りを見回す。

(ここ……病院?)

 ベッドの脇に置かれたチェストの上に、小さなプリザーブドフラワーのアレンジメントやお菓子が置かれている。誰が持って来たのか分からないが、なぜか私が好きな時代劇映画のDVDも置いてあった。

(私は……)

 ままならない思考で記憶を掘り起こす。
 昨晩は会社から自宅へ帰り、いつも通り夕飯を食べて眠ったはずだ。そう言えば横江さんから会社に関する資料を借りて、ベッドサイドで読んでいた記憶もある。それなのにどうして今、自分は患者として病室に寝かされているのか。
 とりあえず誰かに事情を聞きたいと思い、ベッドから降りる。両足に上手く力が入らなかったため、ふらふらと這うようにして出口まで向かうと、病室のドアを開けた。

「あ、あの……」
「有明さん!?」

 廊下から顔を覗かせると、ちょうど看護師が歩いて来るところだった。彼女は私の顔を見るや否や仰天し、手に持っていたバインダーをばさばさと床に落とした。