「……とうとう三人になっちゃったね」

 夜の帳が降りようとしている。

 カレンダーの二月一日にサインペンで大きくバツのマークを付け、きららちゃんが疲れたような笑顔を浮かべた。
 赤く腫れ上がった目は虚ろで、最早悲しみを感じる力も残されていないように見えた。

「元々卒業できないんだったら、初めから言って欲しかったな」

 だったらバイトも進学の勉強もしないで、海羽ちゃんと遊んだのに。
 そう呟くきららちゃんに、胸が締め付けられるような気持ちになる。
 返す言葉を失った私は中央に置かれた椅子に腰かけ、ぐるりと教室を見回した。

 騒がし過ぎるほどだった毎日も、満員御礼だった文化祭のパンケーキカフェも、全てこの教室で繰り広げられていた光景だ。今振り返ると昔の出来事どころか幻だったのではないかとさえ思えて来る。

(ここで、皆が生活してたのに)

 教室の隅に置かれたゴミ箱の中には、きららちゃんが持って来た卒業旅行のパンフレットが突っ込まれていた。