『君がこの手紙を読む頃には、俺はもうこの世界にはいないと思う。それでもどうしても伝えたいことがあって、書き残すことにした』

『この世界から人が消えて行く理由について、心当たりがあった。ジュンの手によって何もない場所から俺達が生まれたように、恐らく俺達は彼の手によって消えて行く』

『結論から言うと、この世界の期限はあとわずかしか残っていない。それはジュンが日記で話していた、『データ』と言うもののことだろう。カレンダーを見た時、俺はその可能性を確信した』

『この世界は、君が蒼遥高校で最後の高校生活を送る物語だ。俺達は当たり前に三月を迎えられると思ってたけれど、そこまでのハッピーエンドをジュンは用意してくれていなかったのだと思う。名前を持たない人物から次々と消滅して行ったのは、この世界が主人公である君を中心に創られていたからに他ならない』

『主人公、どうかこの世界が終わる前に、元の世界へ戻って欲しい。俺達が電子の藻屑となるように、君だってこの世界にい続ければ身の安全は保障されない』

『君はこの図書室に、初めて遊びに来てくれた生徒だった。短い間ではあったけれど、君と話をすることができて良かった。そしていつか君がジュンに会ったら、伝えて欲しい』

『俺を創ってくれて、ありがとうって』