放課後、私は校内放送でヨリに呼び出されていた。

「職員室で奇妙な生徒の話を聞いてね。君なら何か知っているかもしれないと思ったんだ」
「どんな話?」
「一年生の男子生徒で、結城密と言うらしい。かなり切羽詰まった様子で、昨日校内にある全てのカレンダーを見せて欲しいと要求して来たそうだ」

 ヨリから発された名前に、私の心臓がどくんと不穏な音を立てる。

「結城くん……知ってるよ。いつも図書室にいる、図書委員の男の子」
「カレンダーについては?」
「分からない……けど、彼のことだからきっと何か訳があったんだと思う」

 根拠はないものの、とても嫌な予感がした。私はヨリと共に急ぎ足で図書室へと向かう。

「結城くん?」

 放課後、彼が図書室にいない日はなかったが――
 冷たいドアを開いて声をかけると、室内はしんと静まり返っている。

「そう言えば図書室ってほとんど利用したことがなかったな」

 私の後ろで、ヨリが小さな声で呟く。
 賑やかで明るい外の世界が目の前にありながら、わざわざ放課後に静かで薄暗い図書室へ足を運ぼうとする生徒は少ない。そんな図書室で、結城くんは恐らく誰よりも本を愛し、誰よりもこの世界のことを理解し、自らの役割を全うしようとしていたはずだった。

「いないみたい……」

 彼の不在に困惑しつつ、閲覧用の広い机に目を向けた私は「あっ」と声を上げる。