「売店に行こうと思って、ちょうど一緒に歩いてたんだよ」

 中庭に生える桜の木の近くで立ち止まり、風間くんはシャツの胸元をぎゅっと握りしめる。

「そしたらあいつ、急に消えちまって……」
「消えたって……」
「本当に花びらが散るみたいだった。頭の先からつま先まで、あいつの全部が細かく分かれて消えちまったんだ」
「……」
「……バカ」

 大きく見開かれたきららちゃんの瞳から、大粒の涙が流れた。

「たろちんのバカ!!」

 セーラー服の袖が鼻水で汚れることも、涙でせっかくの可愛い顔がぐしゃぐしゃになることも厭わず、きららちゃんは大声で泣いた。

「たろちんの受験が終わったら、一緒に家庭科室で紅茶飲もうって思ってたのに!」
「きららちゃん――!」
「消えちゃったら、もう、きららの願いは叶わないじゃない!!」

 俯いた風間くんの肩が震える。
 胸元で泣きわめく彼を受け止めながら、私はこみ上げる無念を奥歯で必死に噛みしめた。