(神様は、もしかしたらいるのかもしれない)
(だけど、時々とっても残酷な悪戯をする)

 そのことを、私は楽しい日々ですっかり忘れてしまっていた。

(そして――)

 一人、また一人と生徒がいなくなる中、『恐れていた日』はあっけなく私達の元へやって来たのだった。

 休み時間だと言うのに、クラスの雰囲気は葬式のように重苦しい。水を張ったように静かな室内で口を開こうとする人は誰もおらず、その様子は誰かと会話をすることを躊躇っているようにも見えた。

 座っているだけで押しつぶされてしまいそうな空気に耐え切れず、せめて外の冷たい空気でも吸おうと私は教室を開ける。

「……風間くん?」

 目の前に、顔面を蒼白にした風間くんが立っていた。
 瞳を大きく見開き、彼は震える唇を開く。

「太郎が……消えた」

 ガシャン、と背後で激しい音がする。
 振り返るときららちゃんが、持っていた裁縫箱の中身を床にぶちまけていた。