「この学校の生徒だけではありません。この壱師町の至るところで、連日行方不明者が発表されています」
「消えちゃうって、どう言うことなの……!?」

 思わず呟いた私に反応して、ヨリが小声で答える。

「ちょうど昨日、目の前で友人が消える瞬間を目撃した生徒がいてね。僕も話を聞く機会があった」
「その人はなんて?」
「それが、僕も理解が追いつかないのだけれど……話によると、消えてしまった生徒は、たんぽぽの綿毛が散るみたいに、突然光の粒となって空中に霧散しまったそうなんだ」

 学年主任の話を聞いていた一人の女子生徒が、わっと大声で泣き出す。彼女に焚きつけられたかのように、室内では次々とすすり泣く声が聞こえて来た。

「……あと少しで卒業だったのに、どうしてこんなことになっちゃったんだろうね」
「……」
「それに、今ここにいる僕達だって、もしかしたら……」

 そう言ったヨリの語尾がわずかに震える。
 呼吸が浅くなるのを感じながら、私はヨリがぎゅっと拳を握りしめる様子を、ただ見つめるしかなかった。