通学路の桜の木は葉を落とし、寒々しい佇まいだ。それでも目を凝らせば枝先には蕾が膨らんでおり、春の到来が確かに近付いていることが分かる。

(桜が咲く頃には、私はもういないかもしれない)

 結城くんが話していたリコリス座流星群の出現まで、残された時間は限られている。

(でも、そんな話をしたら皆はどんな顔をするだろう)

 皆には、笑顔で蒼遥高校を卒業して欲しい。
 残された高校生活を大切に生きる、彼らの邪魔をしたくない。
 何より――私自身が、自分のせいで皆が悲しむ顔を見たくない。

 そんな理由で年が明けても誰に打ち明けることもさきないまま、私は変わらぬ毎日を送っていたのだった。