会社へ戻り、私はアムールゲームスから引き継いだと言う膨大な資料の整理を手伝った。

「これはファイリングね」
「はい」
「あ、こっちはもういらないからシュレッダーかけといて」
「了解しました」

 現在の部署に異動になる前は経理部門にいたそうで、横江さんは数字が沢山印刷された書類を次々と片付けて行く。彼女の指示に従いロボットのように手を動かし続けているうちに、時計はあっという間に定時を迎えていた。

「あなた、アムールゲームスについて知りたいんだったらこのファイル持って行きなさい。寝る前にでも目を通してみたらいいわ……あ、『シャルマン・アンジュ』もやる? 手元にあるとついつい遊んじゃうから、私のゲーム機も持ってって」

 帰り支度を始めた私を引き留め、横江さんは一冊のファイルと携帯用ゲーム機を押し付けて来た。
 ずっしりと重いファイルの中をめくるとアムールゲームスがリリースしたゲームの告知用パンフレットや、ゲーム業界に関する新聞の切り抜きなどが綺麗に収まっている。

「それ、クマPが職場で使ってたファイルですって。アムールの資料、きちんと保存してたみたい」
「いいんですか? そんな大切なもの借りてしまって……」
「ええ。それ読み込めばアムールの歴史は大体理解できると思うし、ゲームも含めて後で返してくれれば十分よ」
「ありがとうございます」

 ファイルとゲーム機を鞄にしまい、お礼を言う。
 少し残業をすると話す横江さんを残し、私は一足早く職場を後にした。