ぽつぽつと話をしながら歩くうちに、やがて明かりの灯る寮が見えて来る。
「私の寮、あの門がある建物だから。ここでいいよ」
彼の前に立ち、織也くんを見上げる。見慣れない私服姿は、実年齢よりもぐっと大人びて見えた。
「今日はありがとう。本当に楽しかった」
「……なあ」
所在なさげに視線を彷徨わせた織也くんは、少しだけ躊躇いがちに呼びかける。
そしてポケットに手を入れると、小さな箱を取り出した。
「これ。今日お前に渡そうと思ってた」
「えっ? 私にも用意しててくれたの?」
「まあな。プレゼント交換もお前からだったし、ちょうど良かった」
サイズの割に重量感のある立方体の箱におぼろげながらも中身の予想がついてしまい、不覚にも心臓が騒ぎ出す。
どぎまぎしながら包みを開けると、中にはガラスのペンダントが入っていた。
「わ……かわいい!」
球体のペンダントトップは街灯に照らされ、その藍色を覗き込むと宇宙に浮かぶ星々のように光が散らばって見える。
「良かったらそれ、俺に付けさせて」
「う、うん……」
織也くんは慣れた手付きでペンダントの箱を取り上げ、私の後ろへ回る。
「マフラー外すよ」
「あっ……」
言い終わるよりも早く、首に巻いていたマフラーがほどかれる。
首元に伝わる華奢で冷たいチェーンの感触と背後に感じる彼の気配に、私はぎゅっと目をつぶった。
「……はい。できた」
胸元で、小ぶりのペンダントが揺れている。
「ありがとう。大切にするね」
「こっちこそありがとな。プレゼント」
そう言って、織也くんはふわりと微笑む。
「それから……いいお年を」
その姿が夜闇に紛れるまで、私は遠ざかる彼の背中を見送った。