風間くんの次に勝利した太郎くんは、かなたのプレゼントを引き当てた。
「それ、ジョーズ社のワイヤレスイヤホン。重低音聴くならこの会社の商品以外しかあり得ないから」
詳しいことは分からないが、プロのサウンドクリエイターであるかなたが選んだ商品だからこだわりの一品であることは間違いない。プレゼントを受け取った太郎くんも「登下校で音楽聴くからめっちゃ嬉しい」と目を輝かせて喜んでいた。
「次はきららだねっ!」
残されるは太郎くんと私のプレゼントだ。
「どっちが当たるかなー。えいっ」
紐を引っ張ったきららちゃんの手元に、金色のリボンで結ばれた赤い箱が手繰り寄せられる。中にはトナカイのイラストが描かれたマグカップと紅茶のセットが詰まっており、きららちゃんは「わあ、可愛い!」と、ぱっちりした瞳を輝かせる。
「こんなきららの好みにぴったりのプレゼント、きっと海羽ちゃんが――」
振り返ったきららちゃんに、私は苦笑いで目配せをする。
隣に正座をする太郎くんが、呆然とした表情で彼を見つめていた。
「……そっか! ありがと、たろちん。きらら、大切に使うね」
「きららちゃんが……俺の選んだマグカップで……俺の選んだ紅茶を……」
「おい、落ち着け」
みるみる顔を真っ赤にさせた太郎くんは、やがて後ろにひっくり返った。
「んじゃ、俺はお前からのプレゼントだな」
太郎くんをぱたぱたと扇ぐ面々を一瞥し、織也くんは最後に残ったプレゼントを拾い上げ、中を開く。
「写真立てと……ミサンガ?」
藍色をベースとしたミサンガを摘まみ上げた織也くんに、「そう」と私は頷く。
「ミサンガは元々合唱部の時に、自分で作って手首に結んでたの。ジンクス通りに願いが叶う保証なんてないけど……身に付けとけば自分の願いをいつだって思い出せるから、ちょっとは夢に近付くことができるんじゃないかなと思って」
「……」
「写真立ては、ただ私が欲しかっただけ。皆と一緒にいられる瞬間を、写真として形に残しておけたら幸せだなって思ったから」
黙ったままこちらを見つめる織也くんに、はっと私は我に返る。
「あ、ごめんね。気の利いたプレゼントができなくて……」
「いや、嬉しいよ。ありがと」
自分本位だったかな、と少し後悔したが、彼は優しい笑顔を浮かべた。
「それよりミサンガ。お前が作ったんなら結んでくれない?」
「えっ?」
ずいと左手首を差し出され、私は思わず聞き返す。
「いや、ミサンガって願いを込めながら結ぶものなんだよ」
「願いならもう決まったから」
「そ、そうなの? じゃあ……」
モデルの仕事もあるから目立ちにくい足首にしなくていいのかと気になったが、有無を言わさぬ彼に押されて私はおずおずとミサンガを骨ばった手首に回した。
(織也くんの願いが、どうか叶いますように)
手首を回してもきつくないようにわずかな隙間を残し、切れないようにミサンガを結ぶ。
ほどけないか確認してから視線を上げると、こちらをじっと見つめる彼の瞳と目が合った。
「うーわ。そう言うの抜け駆けって言うんですけど渡会織也くん」
突如聞こえた抑揚のない声に驚いて振り返る。
背後のソファではきららちゃんを含む四人が仲良く並んでこちらをにやにやと眺めており、私達は慌てて互いの手を離した。
「それ、ジョーズ社のワイヤレスイヤホン。重低音聴くならこの会社の商品以外しかあり得ないから」
詳しいことは分からないが、プロのサウンドクリエイターであるかなたが選んだ商品だからこだわりの一品であることは間違いない。プレゼントを受け取った太郎くんも「登下校で音楽聴くからめっちゃ嬉しい」と目を輝かせて喜んでいた。
「次はきららだねっ!」
残されるは太郎くんと私のプレゼントだ。
「どっちが当たるかなー。えいっ」
紐を引っ張ったきららちゃんの手元に、金色のリボンで結ばれた赤い箱が手繰り寄せられる。中にはトナカイのイラストが描かれたマグカップと紅茶のセットが詰まっており、きららちゃんは「わあ、可愛い!」と、ぱっちりした瞳を輝かせる。
「こんなきららの好みにぴったりのプレゼント、きっと海羽ちゃんが――」
振り返ったきららちゃんに、私は苦笑いで目配せをする。
隣に正座をする太郎くんが、呆然とした表情で彼を見つめていた。
「……そっか! ありがと、たろちん。きらら、大切に使うね」
「きららちゃんが……俺の選んだマグカップで……俺の選んだ紅茶を……」
「おい、落ち着け」
みるみる顔を真っ赤にさせた太郎くんは、やがて後ろにひっくり返った。
「んじゃ、俺はお前からのプレゼントだな」
太郎くんをぱたぱたと扇ぐ面々を一瞥し、織也くんは最後に残ったプレゼントを拾い上げ、中を開く。
「写真立てと……ミサンガ?」
藍色をベースとしたミサンガを摘まみ上げた織也くんに、「そう」と私は頷く。
「ミサンガは元々合唱部の時に、自分で作って手首に結んでたの。ジンクス通りに願いが叶う保証なんてないけど……身に付けとけば自分の願いをいつだって思い出せるから、ちょっとは夢に近付くことができるんじゃないかなと思って」
「……」
「写真立ては、ただ私が欲しかっただけ。皆と一緒にいられる瞬間を、写真として形に残しておけたら幸せだなって思ったから」
黙ったままこちらを見つめる織也くんに、はっと私は我に返る。
「あ、ごめんね。気の利いたプレゼントができなくて……」
「いや、嬉しいよ。ありがと」
自分本位だったかな、と少し後悔したが、彼は優しい笑顔を浮かべた。
「それよりミサンガ。お前が作ったんなら結んでくれない?」
「えっ?」
ずいと左手首を差し出され、私は思わず聞き返す。
「いや、ミサンガって願いを込めながら結ぶものなんだよ」
「願いならもう決まったから」
「そ、そうなの? じゃあ……」
モデルの仕事もあるから目立ちにくい足首にしなくていいのかと気になったが、有無を言わさぬ彼に押されて私はおずおずとミサンガを骨ばった手首に回した。
(織也くんの願いが、どうか叶いますように)
手首を回してもきつくないようにわずかな隙間を残し、切れないようにミサンガを結ぶ。
ほどけないか確認してから視線を上げると、こちらをじっと見つめる彼の瞳と目が合った。
「うーわ。そう言うの抜け駆けって言うんですけど渡会織也くん」
突如聞こえた抑揚のない声に驚いて振り返る。
背後のソファではきららちゃんを含む四人が仲良く並んでこちらをにやにやと眺めており、私達は慌てて互いの手を離した。
