流星とジュネス

「にしても太郎……いくらクリスマスとは言えそれはダサ過ぎるだろ」

 呆れたような織也くんの声に、一同は振り返る。
 見れば彼は赤地に巨大なクリスマスツリーの柄が縫われたセーターを着ていて、正面から覗き込んだかなたは「ぶっ」と顔を真っ赤にさせて口元を押さえた。

「た、太郎くん、随分張り切ってるね……」
「きららそれテレビで見た! ダサセーターって言うんでしょ!?」

 指をさして笑うきららちゃんに、太郎くんが目を白黒させて弁解する。

「違うんだよ。朝起きたらクローゼットの中にこの服しかなくて――」
「んな下手な嘘つかなくていいって。パーティー盛り上げるために着て来てくれたんだろ? この日のためにわざわざ用意するとか、お前ほんといい性格してるな」

 笑顔の風間くんによって肩に腕を回されながら、太郎くんは盛大なため息をついた。

「嘘じゃないって……」

 しょぼくれる太郎くんを前に、私は四月の出来事を思い出す。確かに自分がこの世界へやって来た当初も、自室のクローゼットの中には好みに合わないガーリーな服ばかりが並べられていた。

(あの時私もすぐに別の服を買いに行ったんだっけ――)
(ま、いっか。盛り上がってるし黙っとこ)

 その後手分けをしてダイニングテーブルに食材を並べた私達六人は、カーペットに腰を下ろしてクリスマスのディナーを楽しんだ。

「ちょっと体育会系、ローストビーフ取り過ぎだよ」
「そうか? そう言う桐生もちゃんと食わねえと風邪引いちまうぞ」
「余計なお世話」
「織也~この生ハム食べていい?」
「おいきらら! 人んちの冷蔵庫勝手に開けんじゃねえ」

 大勢で囲む夕食はあまりに楽しくて、それでもこんなイベントは最初で最後かもしれない。そう考えると、胸のあたりがぎゅっと切なくなる。。

「海羽ちゃん、どうしたの?」

 はっとして顔を上げると、生ハムを片手に戻って来たきららちゃんが、不思議そうな表情で私の隣に立っていた。

「あ……ううん、ちょっとわさびが目にしみて」
「そっかあ。この和風ソース、結構辛かったもんね」

 胸の痛みをわさびで誤魔化した私は、罪悪感を打ち消すように手元のグラスに注がれたオレンジジュースを一気に飲み干した。