「この町でリコリス座流星群が見えることはもう分かったよね」
「うん。さっきのプラネタリウムの解説で話してたね」
「実はジュンの日記が更新されなくなって二ヵ月が経った頃、この町にリコリス座流星群が現れたんだ。寝ても覚めても同じ毎日が始まるものだから、町や学校ではどうしたらこの世界は動き出すんだって皆焦っていたけれど……夜空だけは暦通りに巡っていたみたい」
「そのことを知っていたのは結城くんだけなのかな」
「恐らくね。そもそも混乱の中で呑気に星を観測しようなんて思ってた人はほとんどいないと思う」
透き通るように白い肌に、長い睫毛が伏せられる。独特の中性的な雰囲気に呑まれるように、私は彼の横顔を見つめた。
「ジュンが何か良くないことに巻き込まれていると思った俺は、流星群に祈ったんだ。ジュンを助けてくださいって。そしたら……」
「まさか」
「そう。この世界に君が来た」
振り向いた結城くんと視線がぶつかり合う。瞬き一つせずにこちらを見つめ、彼は私が思っていたことを代弁した。
「俺は君が元の世界に帰る手がかりも、リコリス座流星群にあると思ってる。だって君は流星の導きでこの世界に来たのだから」
その代わり、と唇から紡ぎ出される声が小さくなる。
「もし元の世界へ戻れたら、ジュンを助けてあげて欲しいんだ。追い込まれた彼を助けてあげられるのは、多分君しかいないと思う」
「結城くん……」
リコリス座流星群が再びこの世界に現れるのは、来年の二月。
私に残された時間は、既に二ヶ月を切ろうとしていた。
「うん。さっきのプラネタリウムの解説で話してたね」
「実はジュンの日記が更新されなくなって二ヵ月が経った頃、この町にリコリス座流星群が現れたんだ。寝ても覚めても同じ毎日が始まるものだから、町や学校ではどうしたらこの世界は動き出すんだって皆焦っていたけれど……夜空だけは暦通りに巡っていたみたい」
「そのことを知っていたのは結城くんだけなのかな」
「恐らくね。そもそも混乱の中で呑気に星を観測しようなんて思ってた人はほとんどいないと思う」
透き通るように白い肌に、長い睫毛が伏せられる。独特の中性的な雰囲気に呑まれるように、私は彼の横顔を見つめた。
「ジュンが何か良くないことに巻き込まれていると思った俺は、流星群に祈ったんだ。ジュンを助けてくださいって。そしたら……」
「まさか」
「そう。この世界に君が来た」
振り向いた結城くんと視線がぶつかり合う。瞬き一つせずにこちらを見つめ、彼は私が思っていたことを代弁した。
「俺は君が元の世界に帰る手がかりも、リコリス座流星群にあると思ってる。だって君は流星の導きでこの世界に来たのだから」
その代わり、と唇から紡ぎ出される声が小さくなる。
「もし元の世界へ戻れたら、ジュンを助けてあげて欲しいんだ。追い込まれた彼を助けてあげられるのは、多分君しかいないと思う」
「結城くん……」
リコリス座流星群が再びこの世界に現れるのは、来年の二月。
私に残された時間は、既に二ヶ月を切ろうとしていた。
