「最初俺が生まれた時、ここは真っ白な世界だったんだ」

 外の世界を眺めながら、彼は呟く。

「真っ白だった空間に、蒼遥高校ができて、周辺に一つの町が出来て。そのうち同じ制服を着た仲間も増えて行った」
「結城くんがこの日記に気付いたのはいつ?」
「この学校が作られて少し経った頃だよ。ジュンの日記を読みながら、この世界が少しずつ完成されて行く様子を知るのが楽しかった。だけど……俺達の物語は、多分ハッピーエンドじゃない」

 ため息をつき、再び彼は私に向き直る。

「教えて。ジュンはどうなっちゃったの? 俺達を置いて、ジュンはどこに行っちゃったの」
「……」

 縋りつくような彼の表情が私の胸を締め付ける。

「……どうか、落ち着いて聞いて」

 結城くんのためにかけた言葉は、自分に向けて言い聞かせているような気がした。
 神妙な面持ちで頷いた彼を前に、私は真実を伝える。