『十一月三十日。アムールゲームスは、死んだ』
『できる限りの手は尽くしたつもりだった。最後まで一緒に働く仲間を守りたかったし、会社がこんな状態になっても、『約束のエトワール』は必ず世に出すつもりで取り組んで来た。それなのに――』
『全ての希望を失い、自らが生きる意味は最早何も残されていない』

「……」

 日記の更新はこの日が最後となっている。会ったこともない『伝説のプロデューサー』が抱えた孤独の苦しみに、私は息がつまるような思いがした。

「……結城くんは、プロデューサーの日記を見てこの世界のことを知ったんだね」

 私の言葉に結城くんは静かに頷くと、「俺は、この世界で一番最初に生まれた人間だった」と呟いた。

「俺は名前を持って生まれたけど……君の周りにいるかっこいい同級生みたいに、天賦の才能を持ち合わせている訳でもない。その理由はね、彼は俺を自分の分身として作ったからなんだ。俺はジュンと会ったことはないけれど、きっと彼は俺に外見も中身も、よく似ているんだと思う」

 彼は視線を窓の外へ向ける。空はよく晴れていて、眩い夕陽がグラウンドに降り注いでいた。