「良かったら、君にも読んでもらいたい。ジュンがどんな気持ちでこのゲームを作ったのか、どんな気持ちで衰退しつつあるアムールゲームスに残り続けたのか。ここには全てが書いてある」

 ファイルを手渡された瞬間、私の両手にずしり、と重みが加わる。のしかかるこの重さは、単純なコピー用紙の重畳だけでは形容できないような気がした。

 結城くんの視線に促され、私は表紙をめくる。毎日絶えず記録されていたと言う日記には要点をかいつまむように、彼によって付箋が貼られていた。

『四月三日。とうとう社長からの許可が降り、『約束のエトワール(仮)』のプロジェクトが発足する。ディレクターは『シャルマン・アンジュ』で長らく付き合いのあった亀山が担当。シャルアンを超える名作を創ることを共に誓う』

 『シャルマン・アンジュ』はアムールゲームスのヒット作品だ。横江さんのことを思い出し、懐かしい気持ちになる。

「制作当初は順調だったみたいなんだ。ほら」

 最初のページを読み終えたタイミングで、結城くんが横からページをめくる。