「俺も最初に見つけた時は驚いたよ。まさかこの本棚が二重になっていたなんて」
「よ、よく気付いたね……」
「素直に考えれば簡単なんだ。隣の本棚のサイズを見れば、ね」
彼が話す通り、確かに隣の本棚には文庫本よりもはるかに大きな画集や郷土史などが収蔵されている。それぞれ収蔵されている本のサイズが異なるのに正面から見た本棚の大きさが同じところを鑑みると、奥行があるとしか考えることができない。
地下へ沈んだ本棚の後ろには、もう一つの本棚が設置されていた。文庫本が隙間なく敷き詰められていた手前の本棚とは異なり、奥の本棚にはクリアホルダーが数冊置かれているだけだった。
「これは『約束のエトワール』を開発していた約一年間で、ジュンーー熊谷准が残した日記だ。彼は恐らく、これを誰かに見られることを期待して書いた訳ではないと思う。だから誰も気に留めないような図書室の、普通じゃ人の目に晒されないような場所にこのファイルを隠した。それでも俺が見つけてしまったのだけれどね」
一冊を手に取った結城くんは、セーターから覗かせた白い指先でぱらぱらとページをめくる。
ファイルの中にはワープロで執筆したような文字列がびっしりと埋め尽くされたコピー用紙が収められていた。
「よ、よく気付いたね……」
「素直に考えれば簡単なんだ。隣の本棚のサイズを見れば、ね」
彼が話す通り、確かに隣の本棚には文庫本よりもはるかに大きな画集や郷土史などが収蔵されている。それぞれ収蔵されている本のサイズが異なるのに正面から見た本棚の大きさが同じところを鑑みると、奥行があるとしか考えることができない。
地下へ沈んだ本棚の後ろには、もう一つの本棚が設置されていた。文庫本が隙間なく敷き詰められていた手前の本棚とは異なり、奥の本棚にはクリアホルダーが数冊置かれているだけだった。
「これは『約束のエトワール』を開発していた約一年間で、ジュンーー熊谷准が残した日記だ。彼は恐らく、これを誰かに見られることを期待して書いた訳ではないと思う。だから誰も気に留めないような図書室の、普通じゃ人の目に晒されないような場所にこのファイルを隠した。それでも俺が見つけてしまったのだけれどね」
一冊を手に取った結城くんは、セーターから覗かせた白い指先でぱらぱらとページをめくる。
ファイルの中にはワープロで執筆したような文字列がびっしりと埋め尽くされたコピー用紙が収められていた。
