「乙女ゲームの業界についてはなんとなく理解できた?」
「はい。それにしても、アムールゲームス以外にもゲームのメーカーって沢山あるんですね」
「そうね。破産と共に解散してしまったアムールゲームスでも、この際にって他のゲーム会社に引き抜かれたメンバーが多いみたい」

 会社へ戻る前に昼食を食べようと入った最寄駅近くのカフェでランチを取りながら、横江さんはアムールゲームスの過去について語る。

「だから今のチームは私と横江さんしかいないんですか?」
「ええ。自分の勤めていた会社が突然倒産したことに加えてクマPのこともあったから、皆ショックだったんだと思う。ハイクレックスとしては勿論旧アムールのメンバーがうちの会社に籍を移すことについては肯定的なんだけど、今の時点で名乗りを上げて来た人はいないわ」
「なんだか勿体ないですね……」
「そうね」

 横江さんは寂しそうに瞳を伏せたが、「とは言え、海羽ちゃんがこの世界に興味を持ってくれて嬉しい」と自分を奮い立たせるように笑顔を浮かべた。