「まず、君のことを教えてもらいたい」
「私のこと?」
「そう。なんでもいいけどーーできれば、この世界に来る前のことがいいかな」

 彼はどこまで私のことを知っているのだろう。
 悩みながらも、私は彼に今年に入ってからの出来事を伝えた。

「ビジネス系の専門学校を卒業して、今年の四月にハイクレックスっていう部品を作る会社に就職したの。だけどハイクレックスは私が入社する前にアムールゲームスって言うゲーム会社を買収してて、私は破産したアムールゲームスの後継に当たる部署に配属になった」
「それで、君は『約束のエトワール』と出会ったの?」
「どうしてそれを……?」

 驚いて尋ねるも、結城くんは「いいんだ。まずは君が話して」とかぶりを振る。腑に落ちない思いを抱えつつ、私は続けた。

「あなたも話してたーー熊谷プロデューサーの残した記録の中に、『約束のエトワール』のゲームソフトを見つけたの。最初はまだ発売されてない新作のゲームなんだと思って、ただの好奇心で遊んでみようと思ったんだけど……気付いたら、この世界に」
「それで君は今、この世界の『主人公』としての日々を過ごしていると」
「そう」