*
放課後。
がらりと図書室の扉を開けると、結城くんは机に向かって本を読んでいた。
「いらっしゃい」
室内は相変わらず水を打ったように静まり返っていて、彼以外の生徒の気配は感じられなかった。
「この高校で図書室を使う人はそんなにいないの?」
気になって尋ねれば、結城くんは「うん」と頷いた。
「君だって、『高校生の頃』は図書室なんか使わなかったでしょ?」
穏やかな喋り方の中に、私の本来の姿を暴く鋭さが見え隠れする。
どうやら彼は私がこのゲームにおける『本当の主人公』ではないことについても、既に見抜いているようだった。
とりあえず座って、と言われるまま、私は彼の向かいの椅子に腰を下ろす。
「で、先週話しかけてた『この世界の秘密』って……」
口を開きかけた私に、結城くんは「急がないで」とやんわりと制する。
「急ぐと大切なことを見落としてしまうから」
「……」
机の上に視線を落とすと、先刻まで彼が読んでいた文庫本が目に入る。
『銀河鉄道の夜』。タイトルにはそう記されていた。
放課後。
がらりと図書室の扉を開けると、結城くんは机に向かって本を読んでいた。
「いらっしゃい」
室内は相変わらず水を打ったように静まり返っていて、彼以外の生徒の気配は感じられなかった。
「この高校で図書室を使う人はそんなにいないの?」
気になって尋ねれば、結城くんは「うん」と頷いた。
「君だって、『高校生の頃』は図書室なんか使わなかったでしょ?」
穏やかな喋り方の中に、私の本来の姿を暴く鋭さが見え隠れする。
どうやら彼は私がこのゲームにおける『本当の主人公』ではないことについても、既に見抜いているようだった。
とりあえず座って、と言われるまま、私は彼の向かいの椅子に腰を下ろす。
「で、先週話しかけてた『この世界の秘密』って……」
口を開きかけた私に、結城くんは「急がないで」とやんわりと制する。
「急ぐと大切なことを見落としてしまうから」
「……」
机の上に視線を落とすと、先刻まで彼が読んでいた文庫本が目に入る。
『銀河鉄道の夜』。タイトルにはそう記されていた。