「一人一枚取って後ろに回せー」

 前の席に座るクラスメイトから受け取った紙切れを見ると、それは進路調査用紙だった。
 プリントが全員に行き渡ったことを目視で確認し、壇上の担任が大声で告げる。

「締切は来週末まで。自分の進路に関わることだから、提出し忘れないようにな」

 自分の経験に沿うならばここは『専門学校への進学』になるが、実際はどのように書くのが正解なのだろう。
 考えあぐねていると、隣に座るきららちゃんと目が合った。

「きららちゃんはもう進路が決まってるもんね」

 声を潜めて話しかけると、彼は「うん。推薦が決まって本当に良かった」と笑顔で頷く。

「高校を卒業して時間ができたら、もっともっと色んな服やアクセサリーを作りたいな。海羽ちゃんをこの手でプロデュースするのが、私の夢だから」

 いつだって私のことを考えてくれるきららちゃんの優しさにしんみりしつつ、刻一刻と近付いている卒業へのカウントダウンにずきんと胸が痛む。
 卒業とは、即ち皆との別れを意味している訳で。

(……本当は、一刻も早く元の世界へ戻る方法を探さなくちゃいけないのに)

 私は現実から目を逸らすように、調査用紙をノートの間に挟み込んだ。