初秋の涼しい風が、扉を開いた私の全身を吹き抜けて行く。
 春にはチューリップが咲き乱れていた庭園だったが、今はコスモスが見頃のようだ。

(……誰かいる)

 ゴムチップで舗装された柔らかな遊歩道を進んでいた私は、フェンスに佇む一人の青年に気付いて立ち止まる。

「あの……」

 満天の星が広がる夜空を見上げていた彼は、ゆっくりと私の方を振り返る。
 仄白い満月に照らされながら、彼は柔らかな笑みをたたえて言った。

「初めまして。有明海羽さん」