流星とジュネス



『亜熱帯の海に浮かぶ小さな島。ここでは、古くからの言い伝えがありました』
『島から南の方角へ、三日三晩休まず船を漕いだ空から見える流れ星に願いを唱えると、その願いは叶うというもの』
『島に暮らすとある青年は、大金持ちになる夢を叶えるため、幼馴染を連れて船旅に出ることを決意しました』

 舞台の端に立った女子部員が、ナレーションを読み上げる。

「船、出すね」

 舞台袖でざると小豆を片付けていた織也くんに声をかけ、私は段ボールで制作した大道具をステージの上へ持って行く。
 二人の演者の後ろで、コーラス隊は出航のシーンを示す明るいメロディラインの演目を披露した。

『コンパスを片手に、二人の旅は順調に進んでいるように見えました。しかしーー』

 グランドピアノの前に座るかなたが、ジャーン、と不協和音を響かせる。
 彼のピアノを合図に、織也くんがステージの照明を落とした。

 航海を続ける二人の船は、やがて嵐に巻き込まれてしまう。
 波に呑まれて船は大破し、目が覚めると見知らぬ島の海岸に打ち上げられていた。

 真っ暗になったステージを、観客は固唾を飲んで見守っている。織也くんがスポットライトを中央に照らすと、瞳を閉じた友人を抱き起こす主人公の姿があった。

「おい! 目を覚ませ!」

 主人公は肩を揺するが、友人は微動だにしない。二階の客席を向いた彼は、驚いたような表情を浮かべて上空を指差す。

「あれは……流星群……!」

 血相を変えて両手を組み、瞳を閉じる彼の姿にナレーションが重なった。

『彼は夢中になって祈りました。失って初めて、自分にとって一番大切なものに気付いたのです』