流星とジュネス



「すげえ人だな」

 舞台袖から客席を覗いた織也くんが呟く。
 春の球技大会でも使用された体育館には、観客席に加えてコート内にも座席が設置されたが、開演前の時点で既に観客はいっぱいになっている。

「ヨリに言って、生徒会のSNSにkanataが登壇することを掲載してもらったの。あっという間に拡散されて、整理券が必要になっちゃったみたいだけど……」

 織也くんは私の方を振り返り、「でも、この日のために沢山練習したんだろ。色んな人に見てもらえた方がいいんじゃねえの」と淡々と告げる。

「桐生だってただネット上で評価されるだけなのは勿体ねえだろ。観客の前で披露する機会が増えれば、あいつの活動の幅だって広がるかもしれない」
「……そうだね」

 人の能力を素直に認め、評価することができる。それが彼のずるいところだ。
 私達の後ろでは部長の朋花ちゃんを中心に、合唱部が円陣を組んでいる。頭にプルメリアの造花で作られた花冠を乗せた彼女は、部員を見回して言った。