「これ、全部アムールゲームスのキャラクターのグッズですか?」
「まさか。昨日も話したけど、今や女性に人気のゲームなんてスマホのコンテンツばっかりよ。このフロアでアムールの関連商品が占める割合なんて、一割あったらいい方かしらね」

 売場では、二人組の女の子が嬉しそうに話をしながら商品を手に取っている。彼女達が肩から下げたトートバッグには大量のイケメンが描かれた缶バッジが付いていて、私は思わず息を呑んだ。

(あれ……全部でいくらぐらいするんだろう)

 「さ、こっちよ」と声をかけられ、我に返る。
 横江さんに案内されてフロアの奥へ行くと、天井まで届きそうな高さの棚に、コンシューマーゲームがびっしりと並べて販売されていた。

「乙女ゲームって言うのはね、この世の全ての女性に癒しと幸せと、それから夢を与えるゲームなのよ」

 棚の前で仁王立ちをして話す横江さんの姿に気圧されつつ、私は「はい」と相槌を打つ。

 傍から見ると怪しい宗教勧誘みたいだが、彼女の表情は至って真剣だ。

「あなた、もし夢がなんでも叶うとしたらどうしたい?」
「夢ですか? なんでも?」
「そう、なんでも。できるだけビッグな夢の方がいいわね」
「そうですね……そしたら田舎に別荘を建てて、朝から晩までこたつで時代劇見てても怒られない生活がしたいです」
「あなた本当に二十歳なの?」

 横江さんは眉をひそめつつも、棚に並べられたパッケージに指を滑らせ、そのうちの一つを抜き取ると私に手渡した。
 『ぬくぬくwinter love!』。そう書かれたゲームソフトを裏返すと、『ひとつ屋根の下、こたつから始まるイケメンとの恋。あなたが選ぶのはどのジジイ系男子?』のキャッチコピーが目に入った。