「遊び相手なら俺がしてやるよ」

　大きな掌から放られたバスケットボールが宙を浮遊し、再び掌の中へ収まる。
　魅惑的な球体の動きに、シベリアンハスキーの鋭い瞳が釘付けになった。

「風間くん……！？」

　振り返った風間くんは、「俺に任せとけ」と爽やかな笑顔を浮かべる。

「一組の全員が桐生を待ってる。早く学校まで連れて行ってくれ」

　一回。
　風間くんが宙に放ったボールの軌道を犬の鼻先が追いかける。
　そして、二回。

「来い！！」

　ボールを持って走り出した風間くんを、シベリアンハスキーの咆哮が追いかけた。

「だ、大丈夫かな。風間くん……」

　いくらトップレベルの運動神経を持っているとは言え、犬の脚力に勝てるかは断言し難い。

「ここは信じるしかないんじゃない？」
「そうだね」
「とにかく俺達は急ごう。助けてもらった分、チャンスを無駄にはしたくない」

　かなたの言葉に頷き、私達は再び高校へ向かって走り出した。