流星とジュネス

 アーケードを抜けると交差点が現れる。まっすぐ進んだ突き当たりにある大通りを左へ曲がれば、高校まではすぐのはずだ。

「きららちゃん達が助けてくれて良かったね。あとはここをまっすぐ行けばーー」

 振り返ったが、後ろで再び足を止めたかなたと視線が交わることはなかった。
 彼は私の肩越しをまっすぐに見つめ、信じられない、と言った表情で腕を上げる。

「……あれ」

 振り返った矢先、喉の奥がひゅっと音を立てる。
 目の前に、腰の高さはありそうな巨大なシベリアンハスキーが、唸り声を上げながらこちらを睨みつけていた。

「嘘でしょ……」

 住宅街から逃げて来たのだろうか。首には赤い首輪が付けられている。
 いくらかなたのためとは言え、さすがに大型犬とタイマンを張る勇気は持ち合わせていない。かと言って明かに怒っている犬を手名付けるスキルを習得している訳でもなく、恐らくそれはかなたも同じだろう。
 犬をできる限り刺激しないように気をつけながら、私は再びかなたを振り返る。

「……逃げる?」
「それしかないな……でもインドア派だから足の速さには自信ない」

 自信があろうとなかろうと、このまま立っているだけでは翌日のテレビニュースにけが人として取り上げられる道しか残されていない。

 目配せをしつつ後退りをした矢先――
 私達とシベリアンハスキーとの間に、音もなく一人の青年が現れた。