辿り着いた商店街はサラリーマンや登校中の小学生が行き交い、不自然な光景は見受けられない。
 この道なら恐らく大丈夫だと安心したのもつかの間ーー

「おはようございまーす! おひさまテレビでーす!」

 突然目の前にテレビカメラを持った男性とレポーターらしき女性が立ち塞がり、私達は思わず足を止める。
 ぎょっとする私達を前に、女性はフレンドリーな笑顔でマイクをこちらへ向けた。

「今日は壱師町特集ということで、町を案内してくれる方を探しているのですが、協力していただけませんか?」
「でも、私達高校に行かなきゃいけなくて……」
「そう言わずに! お二人ならきっと視聴率も上がりますよ〜!」

 学生の登校を阻むとはとんでもない番組だ。思わずかなたと顔を見合わせると、「はいはーい! それわたし達がやります!」と見知った声が背後から聞こえた。

「きららちゃん!? それに、太郎くんも」

 登校中に偶然鉢合わせたのだろうか。きららちゃんは太郎くんの腕を引っ張り、カメラの中に写り込もうとする。

「じゃあ、レポーターはそちらのカップルにお願いしましょう」
「えっ……カップル……!? カップルに見えてますか俺達!?」
「きららは男だよ」

 嬉しそうな表情を浮かべた次の瞬間にはがっくりとうなだれてしまった太郎くんをよそに、きららちゃんは私の背中を押した。

「ここはきらら達に任せて、二人は高校に向かって!」
「あ、ありがとう」

 二人を置いて、私とかなたは商店街を走って行った。