三人並んで外へ出ると、夏の残り香のような生ぬるい風が漂う。
「合唱部のコンサート、kanataが伴奏するんだろ?」
「あ、風間くんも知ってた?」
「太郎が話題にしてたから」
会えたらぜひ話がしたいと、風間くんは無邪気な笑顔を私へ向ける。
「今まで高校に通えなかったんだってな」
「そう。蒼遥へ行こうとしても、色々邪魔が入っちゃって通えなかったんだって。文化祭当日は私が家まで迎えに行って一緒に行くつもりだけど……無事高校まで辿り着けるといいな」
「ま、その辺は心配すんな」
右隣を歩いていた織也くんが言い、ぽんと大きな掌を私の頭へ乗せる。彼に目配せをした風間くんも、「俺達がついてるからな」と自信ありげに胸を張る。
「お、今日はきれーじゃん。星」
不意に織也くんが指差す先に視線を向ければ、空には満天の星が広がっていた。
夏の大三角形に、星空の中に一際白く輝く北極星。星々を照らすように、まるい月がぽっかりと浮かんでいる。
「ほんとだ。流れ星見えないかな」
いつかこの町での生活に終わりが来るとしても。
いつか彼らと離れ離れになる時が来たとしても。
(ここで過ごした日々は、きっと私の中で大切な思い出になる)
そんなことを思いながら、私は二人の間で空を眺め続けた。