三年一組では文化祭の出し物として、パンケーキカフェを開くことが決定していた。『今大流行しているスイーツ』として満場一致で決まった意見だったが、若干の違和感を覚える。もしかしたらこのゲームは数年前に作られたものなのかもしれない。

 高校では授業は行われず、文化祭の準備期間として一日が作業時間に充てられる。一組でもパンケーキカフェの開店へ向けてせっせと準備が行われた。

「海羽ちゃん、合唱部の練習はどう?」

 各テーブルに設置するメニューをカラフルなマーカーペンやマスキングテープを使って作成しながら、きららちゃんが尋ねる。メニューには『チョコバナナパンケーキ』『キャラメルアイスクリームパンケーキ』などとあり、見るだけでお腹が空いてしまいそうなラインナップだ。

「何とか予定通り進んでる。あとは文化祭当日、かなたが無事に高校まで辿り着くことができればいいんだけどな」
「そうだね。かなたのこと、担任の先生には話した?」
「うん。もしかなたが高校に通うようになったら、一組で受け入れられるように教員会議で調整してみるって。籍はあるのに制服も持ってないって話したらびっくりしてたよ」

 文化祭のために必要なかなたの制服は急いで発注をかけ、今頃彼の家に届いている頃だろう。私の話にきららちゃんは「良かった」と表情をほころばせた。