コンサートで披露されるミュージカルのキャストは一年と二年の部員を中心に構成された。キャストは以前演劇部に所属していた部員によって制作された台本を手に台詞を覚えつつ、本番で披露する楽曲の練習にも参加する。任される役割が大きく練習量も二倍必要だったが、レッスンに取り組む彼らの表情は活き活きとしていた。

 かなたと言えば、配られた譜面に軽く目を通しただけで本番披露する曲の伴奏を弾き切って見せ、一同を驚愕させた。精力的に活動する部員に焚きつけられたか、パート練習の音取りに付き合っては伴走者の視点からアドバイスをする姿も見受けられる。

 昼食を取った後、部員は屋外へ軽いランニングに出かけた。かなたも「ジュース買って来る」と姿を消し、公民館の練習室には私と彼のシンセサイザだけが残される。
 戯れに鍵盤に触れると、室内に音階が鳴り響いた。